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一艇150億円越え⁈世界最高峰のヨットレースで使われるAC75 とは 

ヨット
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世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」の第36回大会が2021年に開催されます。この大会で注目されているのが、新たに競技に使われる艇「AC75」です。
このページではそのAC75 について解説します。ヨットのことをよく知らない方も是非ご覧ください

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そもそもアメリカズカップとは?

アメリカズカップの歴史

アメリカズカップの歴史は今から約170年前の1851年に遡ります。1851年にイギリス・ロンドンで第一回万国博覧会の記念行事として「ワイト島一周レース」が行われました。その大会で優勝トロフィーを勝ち取ったのが「アメリカ号」でした。

このトロフィーは「アメリカ」号のカップ、つまり”アメリカズカップ”と呼ばれるようになりました。その後「アメリカ」号のオーナー達は、「カップの保持者は、いかなる国の挑戦も受けねばならない」ということを記した贈与証書とともに、このカップをニューヨーク・ヨットクラブ(NYCC)へ寄贈しました。
これに基づき1870年第1回「アメリカズカップ」が開催され、現在に至ります。アメリカは1983年に初めて敗れるまで132年間にわたってカップを守り続け、この連勝はスポーツ史上最も長い連勝記録となっています。

       

第一回アメリカズカップで使用された「アメリカ号」
アメリカズカップの元となったワイト島一周レースで優勝した「アメリカ号」

現在のアメリカズカップ

アメリカズカップでは優勝トロフィーを手にしたチームが防衛艇となり、それに挑むチームが挑戦艇です。防衛艇と挑戦艇は一騎打ち方式で勝者を決めます。挑戦艇は事前の予選レースをを優勝したチームになります。
このレースは1983年以降、ルイヴィトンが冠スポンサーだったため「ルイヴィトンカップ」と呼ばれていましたが、次の第36回大会からはプラダが冠スポンサーになり、レースの名前も「プラダカップ」となりました。

2021年の第36回大会はニュージーランド・オークランドで開催予定です。防衛艇はニュージーランドのEmirates Team New ZealandTE AIHE号(テアイヘ)で、挑戦艇は今回エントリーした、アメリカ、イギリス、イタリアの内、プラダカップで優勝したチームに決まります。

因みにテアイヘ(日本語でイルカ)という名前は次のことわざから来ています。

“Mā te Aihe e tuitui ai i te ngaru moana, mā te Rangatira e tuitui ai i te tangata”.

“As the dolphin sows through the seas so does a leader sew people together”.

“イルカが海を縫い付ける(泳いでいる姿がそのように見えるのでは?)ように、リーダーは人々を(縫い付けるように)距離を縮めて団結させて仲良くさせる”

セーリングの最先端 AC75とは一体何なのか

冒頭でも述べた通り、AC75 は2021年のアメリカズカップ第36回大会で使用される艇種の名前です。各国のチームはこの艇種を使って大会に挑みます。

では、この船がなぜ注目されているのか、どこが凄いのかを見ていきましょう。きっと、あなたが想像しているこれまでのヨットとは全く別物である事がわかるでしょう。

基本的なサイズデータ

  • 全長:22.7m (75ft バウスプリット含む)
  • 船体長:20.7m (67.9ft)
  • 幅:4.1m(両舷のフォイルアーム軸間の距離で規定)
  • 最大喫水:5m
  • マスト長さ:26.5m
  • 重量:6,500 kg
  • 最小船体容積:70㎥
  • 最大船員総体重:990kg(+体重100kg以下のゲスト1人)
  • クルー(船員)人数:11人
  • 原則カーボン製

クルーザーであればこれはかなりな大きいものです。

例えば12~14メートル未満(36~45フィート未満)の物であれば大体12人乗りくらいで、船内に6人は充分に就寝可能です。
基本的な生活設備の他に船室が2つから3つ、トイレやシャワーも2箇所という艇もあります。これを考えるといかにこの船が大きいか分かりますよね。

AC75 最大の特徴

どうでしょうか。AC75がどのような船なのかイメージ出来ましたか?全長は約22メートルでヨットの中ではかなり大きな方です。しかし、この大きさで6,5トンという軽さは驚きです。
この大きさ・軽さ・セール(帆)の面積ならヨット界では十分に速いのですが、この船は従来のヨットとは全く異なる特徴をもっているのです。

それは「水上を飛ぶ」ことです。

知らない人には訳が分からないと思いますが、この船は水上に浮き上がるのです。

どうやって飛ぶのか

AC75が水上を飛行できる理由はこの船の特徴的な形にあります。気になっていた方もいると思いますが、この船の左右から手のようなT字型の物体が出ていて、後方からもT字型の物体が下に伸びています。これらはT字型フォイルと呼ばれています。

このT字型フォイル3つによって船体が水上に押し上げられるのです。T字型フォイルが船を押し上げる仕組みは先端部分にあります。T字型フォイルの先端には「翼」がついています。
これは飛行機の翼と同じ意味で、セーリング界では「フォイル(Foil)」または「水中翼」と呼ばれています。
飛行機の翼は空気の流れから揚力を生み出し機体を持ち上げていますがAC75のT字型フォイルもほとんど同じ仕組みで、「フォイル」が水の流れから揚力を生み出す事で船体を押し上げるのです。また、水上を飛びながら帆走することを「フォイリング(Foiling)」と言います。

なぜ飛ぶ必要があるのか

水上を飛行機のように飛びながら走る(フォイリング)AC75。そもそもなぜ飛ぶ必要があったのでしょうか。

答えは単純で「船をより速くするため」です。

フォイリングすることによって船体の接水面積を減らす事ができ、水の抵抗を圧倒的に少なくできるのです。
これにより、フォイリング時のAC75は吹いている風の約3倍の速さで帆走することが可能になり、最高速度は時速90kmを超えます。

※フォイリングについて詳しく分かりやすくまとめた記事です。興味がある方は是非(ヨットに詳しくない人も)。今までのヨットのイメージが覆されるはずです。

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AC75の凄いところ

軽い

この船は殆どの部分がカーボンで出来ています。20m以上の大きさで6.5トンという軽さを実現しています。

速い

AC75の最高速度は時速90kmを超えます。これは高速道路を走る車並みの速度です。しかし、海の上では周りに物が無いため体感速度は陸の3倍と言われています。つまり乗員の感じる速度は時速270㎞以上になるのです。

倒れにくい

ヨットでは帆が風に押されることで船が倒れそうになります。多くの場合は倒れないように体重移動をするか、船の下に重りをつけて重心を下げて倒れるのを防ぎますがAC75では風下側のフォイルによって船体を浮かせるため船自体の重さをヨットを倒れないようにする事に使えるのです。

最先端技術がたくさん

このヨットには様々な最先端技術が使われています。造船工学、流体力学、航空力学などの専門的な技術が船の造船時に必要で、ヨットを走らせる際には気象学によって天気や風の分析、船体に大量のセンサーを設置して収集したビッグデータの活用、さらには5Gを用いた船員とサポートチームの瞬時の情報交換などです。

桁違いの資金力

アメリカズカップでは船の基本的な形やルールは決められていますが、ルールの範囲内で様々な工夫をすることができます。そのため、それぞれのチームは船の開発に150億円を超える莫大な資金を投入します。

まとめ

今回は次回のアメリカンズカップで使用されるAC75について見ていきました。どうでしたか?今までのヨットのイメージは覆されたでしょうか?
アメリカズカップは伝統のあるレースでありながら技術の面では常に最先端を行くレースです。いまはAC75などの高性能・高価格なヨットで行われているフォイリングですが、これからはさらに多くのヨットに使われ、新たなヨットの時代を作り出すでしょう。

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Hirosite

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