ヨットのテクノロジーは常に進化し続け、遂にヨットが「飛ぶ」時代になったようです。これは冗談ではありません。ヨットが飛行機のように水上を飛ぶ「フォイリング」。この記事ではその「フォイリング」が何なのか、どういう仕組みなのかについて分かりやすく解説していきます。
フォイリングの仕組み
海を飛行機のように飛びながら疾走する「フォイリング」。初めて見る人にとっては衝撃的な光景です。そして多くの人が抱く疑問が「どうやって飛んでいるのか」です。ここからはその仕組みについて分かりやすく説明します。
原理は飛行機と同じ
海の上を飛行機のように飛びまわると書きましたが、フォイリングの原理は飛行機と同じです。飛行機は翼に空気を流す事で揚力を生み出し、機体を持ち上げているのはみなさんご存知だと思います。
フォイリングでも同様に揚力を利用しています。船の下にあるフォイルに水を流す事で揚力を生み出し、船体を持ち上げます。両者の違いは揚力を生み出すために空気を使うか水を使うかです。
フォイリングに必要な船のパーツ
フォイリングで船を持ち上げるために必要なパーツがセンターボード(ダガーボード)とラダー(舵)とフォイルです。フォイル(先ほど述べた揚力を生み出すパーツ)がセンターボードとラダー(舵)の下に付いており、フォイルに水が流れると揚力を生み出して船を持ち上げます。
センターボードとは
センターボード(ダガーボード)はヨットが真っ直ぐに進むのに不可欠なパーツです。ヨットではセール(帆)に風を流すことで揚力を発生させ、それを船の推進力に変えています。しかし、その際に生じる力の向きは進行方向に対して斜めなので、そのままでは真っ直ぐに走ることができません。センターボードが斜めの力のうち、進行方向以外に動こうとする力を打ち消すことで、ヨットは真っ直ぐに進めるのです。
ラダーとは
一般的には舵と呼ばれていますが、セーリング界では舵のことをラダーと呼んでいて、これは船が方向転換をするためのパーツです。
フォイリングの特徴
海面から浮かび上がり空を飛ぶヨットの姿は興味深い光景ですね。ここからはフォイリングが何なのか詳しく見てみましょう。
とにかく速い
ヨットが飛ぶようになったのは速く走るためです。フォイリングでは船体が水面から離れるため、水の抵抗が劇的に減ります。そのためフォイリング時は吹いている風の約3倍のスピードで走ることが可能になります。速いものは最高時速100㎞に達します。
爽快感
フォイリング時は水面から浮き上がるため、船に当たる波の音が無くなるのでとても静かです。聞こえるのは風を切る音だけ。とても爽快です。水面を飛行する感覚はフォイリングでしか味わえない特別な体験です。
初心者向けではない
フォイリングを行うためにはそれなりの練習と技術が必要になります。飛んでいる時は非常に不安定なので、セール(帆)や体を動かして常にバランスを取る必要があります。普通のヨットに乗りなれた人も最初はフォイリングするのは難しいので、初心者向けの船ではありません。
値段が高い
そもそも、ヨット自体がマイナーなので、船やパーツの値段はかなり高めです。フォイリングする船となれば、通常の船の装備に加え、フォイルなど専用の部品が必要です。また、船の軽量化も行うので価格はかなり高めです。
既に実用化されている?
実は「飛ぶ」船は既に離島と陸を結ぶフェリーなどで使用されています。これは「ジェットフォイル(又は水中翼船)」と呼ばれるものです。これならご存知の方もいると思います。
これは航空機メーカーで有名なあのアメリカ「ボーイング社」が設計したものです。ボーイング929という型番が付いています。
日本では川崎重工がライセンスを持って製造しています。
これはエンジンを使って水を噴射しながら走るので、時速80kmを超えるスピードで走行する事ができます。
↓製造元の川崎重工のサイトで詳しく説明されています。
海を飛ぶ艇種
ナクラ17
こちらより引用
ナクラ17級は、オランダのナクラ社(Nacra Sailing International)が製造する全長5.3m(17フィート)、全幅2.6mのカタマラン(双胴船)のヨットを使う種目であって、オリンピック種目の中で”飛ぶ”のは2016年のリオ大会から採用されたこの艇種だけの為、そこでは最新・最速のヨットになります。
オリンピックでは唯一男女が1人ずつが乗る種目の為、近年注目されています。
2人の船員は常にヘルメットを着用するほど危険な艇種でもあります。
マスト(セールを立てる為の棒)はカーボンで出来ており、その長さは9mに達します。
モス
なんとも「モ○バーガー」が連想されてしまうこの名前笑。
実は昔、”モス”という艇種は飛びませんでした。
なぜ飛ぶようになったかと言うと、単にルールの制約が他の艇種に比べて非常に少なかったからです。その結果、高速化の為に軽く、飛ぶようになりました。
とにかく高速化に舵を振った結果、お値段は250万円から300万円を超えるものになってしまいました。
お値段を無視してテクノロジーを惜しみなく投入した先人達は最高時速65kmを超える船を作り出しました。
この艇種はほとんどをカーボンで作られており、風速7mほどが吹けばスキッパー(乗員)と船体を合わせて100kgほどまで持ち上げることが出来ます。
オーストラリアのモス協会によると、モスに乗ってもいいと考えられるのは以下のような人のようです。(訳は日本のモス協会より)
やあ、みんながみんなモス乗りに向いてるって訳じゃあない。まず相当根性キメないとまずいし、当然ある程度のスキルも必要、あとは忍耐かな。こんなモノにあてはまる人なら、モスが向いてるんじゃない?
1・他人の言うことなんか気にしない!オレはオレの筋を通す。
2・最初の1-2ヶ月、1日最低20回は沈するけど、めげない。
3・レースを完走して「やったぜ俺!」と思えるまでに3ヶ月はかかるけど、いい?
4・年齢なんて関係ない!
5・他のディンギーに乗ってるのが退屈でしょうがない。
6・ヤル気満載!
7・手先が器用でモノ作るのが好き
8・セーリングの上達を感じることが快感。レースに勝つだけがヨットじゃない。
9・重いフネを出着艇のたびにゴロゴロ引くのは疲れた。
10・今乗ってるクラスの人とは、何となくソリが合わない。
11・クローズだってフリーと同じくらい面白いって思える?(引いて起こすだけが能じゃない!)
12・風を読む、タクティクス、他艇をかわすテクニック・・・それもいいけど、「セーリング!走る!」ってのがやっぱ一番。
13・自分のフネをいろいろ改造するのが好き。「それってクラスルール違反じゃね?」という抗議なんかいちいち気にしない。
14・ハイパフォーマンス・スキフにぶち抜かれるのは面白くない!
15・人生最大の挑戦かも?心の準備はできてる?
モス協会より引用
まとめ
今回は海を飛ぶ”フォイリング”について調べてみました。また興味があったら他の艇種も調べていくので、よかったらまた見に来てください。
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